SPRING 2024 ・ 2024年4月3日

芽吹きの音

SA
佐々木 あかり
Creative Director

春の訪れは、音から始まります。冬の間に固く閉じていた紅葉の芽が、わずかにふくらみ、風に揺れる音。耳を澄ませなければ聞こえないほど小さなその音が、嵐山に春が来たことを教えてくれます。

朝早く、宝厳院の庭を歩いていると、木々の間から柔らかな光が降り注いでいました。若葉の緑と、わずかに残る桜のピンクが混ざり合い、嵐山はまるで水彩画のように柔らかく見えました。紅葉の若芽は、秋の深紅とは違う、淡く透き通るような赤みを帯びています。

この時期は、写真を撮るというより「待つ」時間の方が長いかもしれません。一枚の若葉が開く瞬間、風で揺れて光が差し込む角度が変わる瞬間──そうした小さな変化を見逃さないように、じっと観察する時間を大切にしています。

その日は特別な予定はありませんでした。ただ、カメラを手に、ゆっくりと歩く。季節の始まりを、静かに記録する時間でした。宝厳院の庭師の方と少し話をする機会もあり、「この若葉の色は一週間ほどしか見られない」と教えてもらいました。だからこそ、この季節の記録には特別な意味があるのだと感じています。

午後になると、観光客の姿も増えてきました。それでも庭の奥、人の少ない一角では、まだ静かな時間が流れていました。若葉の間からこぼれる光を見ながら、半年後には燃えるような紅色に変わるこの葉たちの、今だけの柔らかさを写真に残しました。

春の新芽
若葉と光
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