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三浦 いちろう
Founder & Lead Photographer
11月も中旬に入り、嵐山の紅葉は徐々に色を失いつつありました。朝の冷え込みが強くなり、霧が深く立ち込める日が増えてきました。例年であればまだ見頃が続く時期ですが、その年は少し早く、葉の落ちるスピードが速いように感じていました。
この日は雨上がりの午後。前夜から降り続いた雨がようやく止み、空には薄い雲が残っていました。濡れた落ち葉が石畳に張り付き、歩くたびに小さな音を立てます。渡月橋から上流へ向かう途中、ふと見上げた紅葉の天蓋から、わずかな光が差し込んできました。
その瞬間だけ、森全体が金色に輝いたような気がしました。雨粒が残る葉が、光を受けて一枚一枚違う輝きを見せる。カメラを構えた指が少し震えました。この光は、もう二度とこの季節には戻ってこない──そう思うと、シャッターを切る手が自然と速くなりました。
天龍寺の境内に移動すると、朝からの参拝客はほとんど帰ってしまい、境内は静かでした。苔むした庭園の奥、一本の古木がまだ鮮やかな紅色を保っていました。周囲の木々がすでに葉を落とし始めている中で、その木だけが時間に抗うように咲き続けているようでした。
夕方近くになると、気温が一気に下がり、息が白く見えるようになりました。その日最後に撮影したのは、水面に浮かぶ数枚の紅葉でした。風がほとんどない静かな水面に、まるで絵画のように葉が浮かんでいる。シーズンの終わりを告げる、静かで美しい光景でした。
帰り道、来年もまたこの場所に来られるだろうかと、ふと考えました。季節は毎年巡ってきますが、同じ光、同じ風、同じ一瞬は二度と訪れません。だからこそ、私たちはこの一瞬を写真に残し続けているのだと、改めて実感した一日でした。

